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艶容女舞衣

昨年の名古屋公演での「曽根崎心中」、今年の新春公演「傾城恋飛脚」そして今回の四月公演「艶容女舞衣」。
自己中心的で社会に甘えたオトコと情が深く一途なオンナの関係は時代や場所を問わず男女の性(さが)は永久不変。
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「曽根崎心中」の徳兵衛や「傾城恋飛脚」の忠兵衛も軽佻浮薄な心根は同様で男の僕でさえ「軽佻浮薄!」といい加減に厭になる人物像でしたが、今回の「艶容女舞衣」の半七に至っては芝居の最中に観てはいられず途中退場をも考えた程でした。

ある日、酒屋の茜屋へ赤子を抱いた女性が酒を買いに、一升樽を持てないので手代に樽を持たせ女性のお伴、暫くすると手代は泣きわめく幼子を抱きながら店に戻ってきます。茜屋主人の半兵衛は奉行所から帰り、女房と共に手代を叱るが一見のお客故に赤子をどうして良いものかと、そこへ娘(お園)をほったらかす放蕩婿(半七)に腹を立て娘を実家に連れ帰ったものの泣いてばかりの娘が病気になってはと、喧嘩した半兵衛のもとにお園を連れて帰ってくる実父の宗岸が現れすったもんだと揉めていると先の幼子がお園に懐き、跡取り息子であり旦那である半七が芸者の三勝との間にもうけた女児と判明。その上、宗岸は半兵衛が奉行所へ行ったのは、友人に欺かれて人を殺した半七の命を助けるため身代わりに縛り上げられていると見抜き、親たちが別間で、今後の行く末を語るうち、
一人お園は、帰らぬ夫を慕い「今ごろは半七さん、どこにどうして・・・・」と。この段でのお園のクドキは浄瑠璃の中でも有名です。聞き入る観客も涙々の名場面。
赤子の袂に入っていた半七からの書付を見つけ、親たちと読むあたりは、現代では考えられない女性の淑やかさと優しさがあります。
書付の最後には「来世では必ず女夫にする・・・」との半七からの約束があり、嬉しさのあまり涙ぐむお園なのです。
そんな一部始終を外から格子越し眺めるのは道行の半七と三勝。半七は両親の優しさに遅きに気づき、三勝は我が子に一目会いたい慕情は募るばかり。
道行く二人がたどり着いたのは夜の刑場、心中を決めた三勝は伊達締めを解き自らの裾を縛り片方を半七の裾に縛ろうとした途端、半七は三勝に向って「未来永劫、契を結んだ三勝、そんな事をするのはワテを信じていない証拠!」などと恫喝。
結局、半七は三勝の喉を切り自らも首を切りのた打ち回り定式幕が引かれます。

なんとも身勝手、優柔不断!観ていて腹が立つやら反省するやらで、僕としては精神的に追い込まれるような芝居でありました。
ちなみに同伴者も半七には怒り心頭、「これだからオトコなんぞ信じられんわ~!」

今回、舞台に近い席を取る事が出来、人形のお顔の表情や小さな手の所作までもが拝見出来ましたが、文楽の場合は「床(ゆか)」が右手に張り出しているので大夫と三味線が見ずらい事が判りました。多少遠い方が全体を見渡せるのですね。勉強になりました。
by yonosuke55 | 2011-04-20 18:31 | 観る
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